呼吸器ジャーナル Vol.69 No.3(2021)

間質性肺炎徹底討論!鳥からは逃げられない過敏性肺炎,放置してよいのかILA

呼吸器ジャーナル

取り寄せ不可

出版社
医学書院
著者名
小倉高志
価格
4,400円(本体4,000円+税)
発行年月
2021年8月
判型
A4変
ISBN
9784260029087

間質性肺炎の領域は今熱い。その診断と治療は今、大きく変わってきており、本特集では注目すべきトピックを含めて、間質性肺炎についてあらゆる角度から、各分野の第一線の専門家に解説していただいた。

 まず、診断においては、臨床医・放射線科医・病理医による間質性肺炎の集学的検討(MDD)について新井先生に解説していただいている。施設ごとでは必ずしもできないMDDであるが、現在、中央判定でMDDを提供するシステムが構築されつつあり、その実際を知っていただきたい。さらに、CT検診で見つかるわずかな間質性陰影(ILA)も話題となっている。ILAは喫煙者の約7~10%に認められ、一部は特発性肺線維症(IPF)に進行するといわれている。このILAについては、高齢者に多くARDSの原因になるといわれ、COVID-19の重症化との関連も推測されている。この管理についても議論があり、加藤先生に解説していただいた。以前ATSのセッションで「ゆりかごから墓場まで」というドキッとするILDのセッションがあったが、全年代に関係するILDについて半田先生に、新しい診断法であるクライオ生検については馬場先生に解説をいただいた。

 2020年にATS/JRS/ALATから、2021年にはACCPから過敏性肺炎(HP)の臨床診療ガイドラインが発表されたが、実臨床でこれをどのように活用すべきか注目が集まっている。私がHPについての思い出として今でも忘れないのは、東京医科歯科大学前学長の吉澤靖之先生の「鳥からは逃げられない」というお言葉であるが、お弟子さんの立石先生、宮﨑先生から解説していただいた。2021年には日本呼吸器学会とびまん性肺疾患に関する調査研究班による「特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き」が改訂される予定である。現在その中心で活動されている呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会長の坂東先生には、最近のガイドラインについて解説していただいた。

 治療については、どんな分野でも薬剤が現場で使用できるようになれば活発になるが、2剤の抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)が保険適用となり、この分野はさらに発展しつつある。ニンテダニブの臨床試験からは、「進行性フェノタイプを示す慢性線維化性間質性肺疾患」としてとらえる疾患横断的な概念が提唱されてきた。初回治療だけではなく、経過の中で炎症性かあるいは線維性病態が中心なのかを判断したうえで、免疫抑制薬や抗線維化薬の使い方に習熟する必要がある。PF-ILDの典型疾患であるIPFについては安部先生に、PF-ILDについては山野先生に解説していただいた。また、間質性肺炎の治療においては呼吸リハビリテーションなど多職種が参加して包括的治療を進めることも重要であり、中澤先生に解説していただいた。

 他にも興味ある話題を専門家に解説していただき、どれも力作になっていると考える。読者の皆さんの明日からの診療に貢献し、日本の間質性肺炎診療の向上につながれば幸いである。

(神奈川県立循環器呼吸器病

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