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《冷えわたる夜の澄みわたるかなたよりもうすぐ天の雪麻呂が来る》
それは、ふとやってきた、不思議でどこかなつかしい気配──。
人生の哀しみと可笑しみを、ときに深く、ときに軽く。
著者の魅力が存分に発揮された第十五歌集。
【歌集より】
菜の花の丘わたる風の源流に紀元前といふ時間はありき
さざんくわにかこまれながら孫わらひ天の太鼓は鳴りやまなくに
見し者のまなぶたならんやはらかくちりかさなれるさくらはなびら
ふるさとの楽園町の丘に似る猫のあたまに陽が当たりをり
母がもう忘れたるわが誕生日 未生以前の秋のかぜふく
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