身代わりの恋が甘すぎて

蜜夢文庫

身代わりの恋が甘すぎて

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出版社
竹書房
著者名
櫻井音衣 , 千影透子
価格
924円(本体840円+税)
発行年月
2021年7月
判型
文庫
ISBN
9784801927438

彼にして欲しかったこと全部、俺が代わりにしてあげる
世話焼きな友達の元カレ×悲観的なアラサー女子

【あらすじ】
「見返してやろうとは思わない?」。ブライダルプランナーの幸は、体の関係はあるのに恋人未満だった高校の同級生・夏樹と、自分の同僚の琴音との披露宴の担当プランナーに指名される。披露宴は無事終えたものの、幸は夏樹への想いを引きずったまま。そんな幸の前に、琴音が結婚したことを知らない琴音の元カレ、恵介が現れる。第13回らぶドロップス恋愛小説コンテスト受賞作。

【本文】P42~45「1 選ばれなかった女と知らされなかった男」より
 こんなキスをしたのはいつ以来だろう?
 なんか気持ちいい……。ダメだ……頭がボーッとする……。
「俺は幸さんとこういうことしたいって思ってんの。わかる?」
「……ダメだよ……」
「なんで? 彼じゃないから? 今でもまだ彼が好き?」
 私がうなずくと、富永さんはネクタイを外した。
「だったら俺を彼だと思えばいいよ。身代わりくらい、いくらでもしてやる」
 そう言って富永さんは、外したネクタイで私の目元を覆った。目隠しをされて視界を遮られると、不安で胸が押し潰されそうになる。
「ちょっと待って……身代わりって……」
「彼を思い浮かべながら全身で思いっきり感じて。彼にして欲しかったこと全部、俺が代わりにしてあげる」
 耳元や首筋にも何度もキスをされ、服の上から体のラインをなぞられると、肩が小刻みに震えた。
 何これ……? お酒の勢いとかその場の雰囲気だけで、彼氏でもない人と、なんでこんなことになるわけ?
 私としたいって……なんで?
 酔った頭では理解できないこの状況で、私は富永さんにされるがままになっている。こんなのおかしいと思うのに、その手で触れられたところが熱くなって、体の奥が疼いた。
「幸……可愛いよ」
 忘れかけていた甘い疼きに無意識に声が漏れそうになり、恥ずかしくて慌てて口元を押さえた。
「声、我慢しないで。もっと聞かせて」
 彼はその手を取って口づける。焦らすばかりで素肌には触れない。じれったくてもどかしくて、堪えきれず彼の首の後ろに腕を回した。
「幸はどうしたい?」
 どうしたいのかと聞かれても、恥ずかしくて言葉が出てこない。
「どうしてもイヤならやめるけど」
「イヤ……じゃない……」
 頭で考えるより早く、私は無意識にそう答えていた。
「だったらどうして欲しいのか、ちゃんと素直に言ってごらん。幸の言う通りにしてあげる」
 ちゃんと素直に言って……って……。恥ずかしい……。
 さっきまで優しかったのに、なんで急にこんなに意地悪なんだろう?
「言わないならやめるよ?」
 耳元で囁ささやかれて、私の奥でずっと眠っていた女の部分が目を覚ました。
「やだ……やめないで……」
 恥ずかしさを堪えて小さな声で呟くと

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