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中国東北部に位置する吉林省長春市の東北師範大学に日本語教師として赴任した著者の奮闘記である。本書には幾つかの特色がある。
1つは、学生や教員との触れ合いが記される中で、少数民族として生きている朝鮮族やウイグル族の学生たちが漢民族と平等の扱いを受けていない境遇が学生たちの言葉を通して赤裸々に綴られていることである。
1つは、教員たちが大学の朝令暮改的な大学行政や、共産党の意向が強く反映される一面が一人の教員の授業展開を通して浮き彫りにされていることである。
そしてもう1つは、長春が旧満州国の首都・新京だっただけに、まだその時代の建築物などが多く残されていて、著者がそれぞれの場所を訪れ、歴史を振り返り、みずからの思いを記していることである。
本書は日本語教師の単なる日本語教育の記録ではない。「満洲」をキーワードに、日本帝国の傀儡国家が中国東北部で行った行為と抑圧に苦しむ民衆を救ったかつての中国共産党、そして、現在の中華人民共和国政府が民衆に及ぼしている一党独裁的な行為が一部重ね合わされていくのである。
著者の語り口が物静かなだけに、時折、見せるかつての日本帝国の支配者としての行為や現在の中国政府が行っている少数民族への差別的政策や貧富の差が一層大きくなっている現状への怒りには大いに納得がいく。
なお本書には「満洲国関連の事項および人名索引」が巻末に付されていて、読者には便宜を与えるにちがいない。かつて日本が侵略していった旧満洲地域への筆者の探究心が並々でないことが強く印象づけられる。
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