私たちの回りには、生活をサポートする多くのシステムがあります。最近は、それらのシステムが故障し、私たちの安全、安心な生活が脅かされるというニュースを毎日のように見聞きします。システム構築のためには、対象となる製品やシステム等についての固有の技術や知識に精通することが重要です。しかしながら、固有の技術だけでは不十分であり、故障しにくいシステムをどのように構築すればよいのか、安全なシステムとは何かなど、システムとして総合的に考え評価することが大事です。その答えを見出す考えを提供してくれるのが、信頼性工学です。
本書は、工学系統の学部学生向けの信頼性工学の入門書として執筆しました。信頼性工学の手法をうまく使用するためには、1)その手法の背景にある考え(理論)を知り、2)実際にどのようにして実際の現場に使用されているかを知ることが重要です。そのことを踏まえ、本書は大きく理論編(2章、3章、4章、5章)と実務編(6章、7章、8章)に分けています。
2章では、理論編の基礎的な事項として、簡単に確率について説明し、信頼性を考える上での基本要素である信頼度、故障率や累積分布関数について紹介しています。3章では、故障データ等の解析を行うために有用な統計手法について紹介しています。4章では、高信頼性システムの設計方法について紹介しています。5章では、修理を伴うシステムの評価について数理的評価方法を紹介しています。
6章以降は実務編として構成しています。6章では、信頼性設計と評価のために有用な手法を実例を用いて紹介しています。7章では、信頼性工学と深い関係にある安全工学の概要について解説しています。8章では、本書で述べた手法等の適用例として、日本の宇宙開発における安全・信頼性設計の事例を紹介しています。
本書は工学系統の分野の学科の学生のみならず、信頼性向上をめざす技術者にも読んでいただき、高信頼度の製品やシステムの開発の一助になることを期待します。
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