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『浮世床』は式亭三馬(安永五~文政五[西暦一七七六~一八二二]年)による江戸滑稽本の代表作である。江戸浅草に生れた三馬は一八歳で戯作の執筆を始めた。寛政の改革期に筆禍事件に巻き込まれるとかえって文名は高まり、文化七(一八一〇)年には仙方延寿丹の売薬店を開業、翌年に売り出したおしろいのはげぬ薬「江戸の水」は大評判となり、さらに本業でも『浮世風呂』などによって人気を高めて、山東京伝と並び称されるようになった。
文化一〇~一一(一八一三~一四)年に刊行された『浮世床』は『浮世風呂』の手法をさらにおしすすめ、庶民の社交場を舞台に下町の雰囲気と住民の類型を、生地のまま、駄洒落や無駄話を通じてフィクションとして写し取っている。
ほぼ同時期に刊行された『東海道中膝栗毛』が主人公の旅する行く先々の風俗を描いているのと対称的な構造である。
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