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紀貫之は『土左日記』を通して、それまで誰も挑んだことのない、日本語による散文を書くことに挑戦した。
それは、漢文でも物語でもない、読まれるためだけの私的な文章だった。
しかし、そのような文章を書き上げるのは当然のように困難を極めた。
紀貫之は目的のために、さまざまな表現方法を取り入れるブリコラージュをいとわなかった。
日記の形をとることも、女に仮託したように見せることも……。
表現の痕跡をもとに、その苦闘のプロセスと、『土左日記』がいかにして和文散文の創始になりえたのかの理由を浮き彫りにする。
【目 次】
緒言
第一章 冒頭表現
第二章 構成表現
第三章 引用表現
第四章 文頭表現
第五章 文末表現
第六章 主語表現
第七章 指示表現
第八章 会話表現
第九章 和歌表現
第十章 対比表現
引用文献一覧
付記
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