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●カフカなど海外文学の影響を受けて、夢と現実、常識と非常識、正気と狂気、さらには生と死の境界を超越して人の世の不確実性を描き、そのあたらしさと実験性をもって、中国文壇で「先鋒派」と呼ばれた余華。ノーベル文学賞の候補として常にその名が挙げられている余華の長篇代表作。『雨に呼ぶ声』『活きる』『血を売る男』に続く長篇作品として四作目。中国では2005年に上巻、2006年に下巻が刊行され、たちまちのうちに話題沸騰、世界的ベストセラーとなった。日本では2008年に単行本、2010年に文庫本が、それぞれ「文革篇」「開放経済篇」として文藝春秋より刊行され、その後長く入手困難となっていた。「現代中国を知るための必読書」としてファンのあいだで伝説になっていた本書が、このたび、上下巻を一冊にまとめて復刊!
●(帯:コピー)したたかでたくましく、一途で愛おしく、下品で猥雑な、極上の物語
●(帯:推薦文より)余華は予定調和をひっくり返していく。読者が泣けると期待した場面で怒らせ、笑った次の瞬間に慄然とさせ、下劣さに眉をひそめるエピソードの結末で感動の涙を流させるーー。(by篠田節子)
●(日本語版あとがきより)長い間ずっと、こんな作品を書きたいと考えていました。極端な悲劇と極端な喜劇が一緒くたになった作品を。なぜかといえば、この四十年あまり、我々の生活はまさに極端から極端に向かうものだったからです。(余華)
●(あとがきより)これは二つの時代が出会って生まれた小説である。前者は文革中の物語で、狂気じみた、本能が抑圧された痛ましい運命の時代。ヨーロッパにおける中世にあたる話である。後者は現在の物語で、倫理が覆され、こんにちのヨーロッパよりもはるかに極端な欲望のままに浮ついた、生きとし生けるものたちの時代の話である。西洋人が四百年かけて経験してきた天と地ほどの差のある二つの時代を、中国人はたった四十年で経験してしまった。四百年間の動揺と変化が四十年の中に濃縮された、非常に貴重な経験である。この二つの時代を結ぶ紐帯(ちゅうたい)はふたりの兄弟である。(余華)
●(解説より)『兄弟』は、並の作家なら、「国家と社会に翻弄されつつ、なおかつ失わぬ家族愛と絆」という浪花節にまとめるところを、竜巻のように上昇し暴走するストーリーと過剰な文章表現と登場人物の性格設定によって、土俗神話的な壮大な世界を作り上げた。一見通俗的な物語の底から、時代や体制を超えた人間の不変的で普遍的な真実を浮かび上がらせた傑作と言える。(by 篠田節子)
●(物語の概要)父親を亡くした李光頭(リー・グアントウ)と母親を亡くした宋鋼(ソン・ガン)が、片親同士の再婚によって義理の兄弟となったあと、それぞれの人生をどう歩んだかを描く物語。文革篇は兄弟の少年時代。地主出身という理由で父親は身柄を拘束され、
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