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第27回小学館ノンフィクション大賞受賞作
イ・ジュンソプは韓国の国民的画家である。
朝鮮半島の平原(現在は北朝鮮)に生まれ、日本統治時代に東京で絵を学び、朝鮮戦争により釜山へ避難。1956年にソウルで没した。
その人生は映画や演劇の題材とされ、美術の教科書にも掲載されている。
しかし、日本で名を知るものは少ない。
その妻・山本方子は日本人である。方子は、貧困と混乱の極みにあった朝鮮半島に夫を残し、幼な子とともに日本に帰国した。
夫への愛を胸の奥にしまい、ひたすら子供のために暮らしを支えた。
筆者は、韓国での現地取材に加え、方子へのロングインタビュー、夫婦が交わした数々の手紙から、運命に引き裂かれた夫婦の実像を描く。
カラー口絵に26点の絵・手紙を収録、未公開書簡も多数掲載。
第27回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
この作品を通じて彼という画家の存在を多くの人たちに知ってほしいと純粋に願う――辻村深月(作家)
太く短く生きた情熱的な画家と、日々を懸命に生きた寡黙な妻。その非対称性が胸に迫り、日韓の微妙な関係性まで映し出しているように思えた――星野博美(ノンフィクション作家)
朝鮮戦争時に、家族に怒濤の勢いで押し寄せてくる歴史の荒波が、あたかもそこにいるかのような臨場感で迫ってくる――白石和彌(映画監督)
※いずれも選評より。
【編集担当からのおすすめ情報】
【第27回小学館ノンフィクション大賞 受賞の言葉】
幼い頃からノンフィクションは好きだった。しかし自分が書くことになるなど、考えてみたこともなかった。
日本統治時代の出会い、北朝鮮・元山での新婚生活、朝鮮戦争による韓国への避難、そして国交がなく果たせなかった家族の再会。これだけ壮大なストーリーをどこからどう伝えたらいいのか。ある時は優れたノンフィクション作品、ある時は恋愛小説に筆運びを学ぶ日々だった。気が付けばソウル特派員時代の2016年に取材を始めてから4年以上が過ぎていた。
何とか書き切ることができたのは、夫婦が交わした数々の手紙や作品の世界を日本でも伝えたいという使命感のようなものがあったためだろう。
日本語で書かれた李仲燮の手紙は愛情にあふれながら、しばしば苛立ちを爆発させていた。方子さんはそんな彼を画家の妻として理解し、支えようとした。2人の夫婦の物語は、民族や国家、戦争といった難しいテーマを超越していた。理屈抜きに、ただ、お互いを必要とした。取材を進めるにつれ、そうシンプルに受け止めるようになっていった。
新型コロナウイルスの感染拡大により、ある日突然大切な人に会えなくなることを私たちは知った。方子さんはそれを半世紀以上前に経験しながら、今も胸に夫を抱いて生きている。取材を通じ、人が幸せに生きるとはどういうことなのか、考えさせられた。そんな私の作品
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