日本でとんちばなしといえば「一休さん」が思い浮かぶと思いますが、中央アジアやトルコ、エジプトでは、とんちばなしといえば「アーファンティ」だそうです。訳者あとがきに「えらい人にだまされそうになったり、どろぼうにひどいめにあわされそうになったりしても、いつもとんちをはたらかせて、うまくきりぬけるアーファンティ」とあるように、本書でも、アーファンティは三人のちえのある男たちを得意のとんちでつぎつぎとやりこめていきます。
となりの国からちえのある三人の男たちがやってきて、王さまにちえくらべをしたいといいます。そこで王さまが白羽の矢をたてたのが、かしこいと評判のアーファンティ。ロバにのってやってきたアーファンティは、王さまをはじめ人びとが見守るなか、男たちの質問に対して、つぎつぎととんちのきいた答えをくりだします。男たちをやりこめるさまは痛快で、読者の子どもたちはアーファンティの答えに、なるほど! そうきたか! と感心するにちがいありません。
絵を描いているのは、新疆ウイグル自治区に住む画家のワン・ホンビン。砂漠を思わせる薄茶色を背景にして、男たちのカラフルな服、美しい装飾がほどこされた柱、そしてロバなどが描かれた絵からは、日本とはちがう異国の空気がつたわってきます。絵が物語の魅力をいっそうひきたてているといえるでしょう。
髙野素子さんの訳文も絶妙で、自分のことを「それがし」といい、へりくだっているようでスパッと言い切るアーファンティの口調は、口に出して読んでも、耳から聞いても楽しくなります。短い話のなかに、子どもをひきつける要素がぎゅっと詰めこまれていて、読み聞かせにもぴったりの1冊です。
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