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コロナ禍とともに医療体制の脆弱さが明らかになっている。医療の枠組みを決めている「医事法」が国からのトップダウンでは、国民の命も健康も、医療従事者の暮らしも守れない。医療崩壊は一時的ではなく、構造的な原因をもつのである。
地方病院の閉鎖。病床の削減。保険制度のアメリカ化。存続の危惧される介護制度。繰り返される薬害・医療事故。
社会では病気への差別がなくならない。生殖医療・臓器移植・終末期医療等を規制するガイドラインには曖昧さが残る。医学部教育では倫理や人権がほとんど教えられていない。世界とのギャップは大きい。
そもそも日本には医療のめざすべき指針を定めた「医療基本法」がない。すべての人が良質、安全そして適切な医療を受けられるように「患者の権利」を中核にした医療基本法の制定が望まれる。そして医療従事者が患者の権利を擁護しつつ、科学性と公正を実現するには、自治が必要だ。
医療に内在するリスクや対立に対処する基準となる「共通の尺度」を定めるのは法の役割だろう。いびつな医事法制を見直さなくては、医療改革はありえない。
医療に無縁の人はいない。刑法学者が医療の現実を分析し、今後への処方箋を提示する。
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