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念願であった長崎県五島列島を巡る旅に出た二人。しかし、それは百五十年前、この地で多数の潜伏キリシタンが命を落とした苦難の歴史を追体験する旅でもあった。――慶応三年、野崎島から六名の若者が洗礼を受けるため、長崎の大浦天主堂へ船出した。しかし、進路を誤り遭難。幸運にも救助されトカラ列島で百日余を過ごし、五島への帰途に就く。幕府は倒れ、新たな時代が訪れると思われたが、新政府もキリシタン禁制を続け、弾圧の嵐が吹き荒れ、不気味な空気に支配されていた。五島でも信者達に凄まじい拷問が加えられていた。明治六年二月、政府よりキリシタン禁教の高札が撤去された。しかし、キリスト教が公認されるまでに、実に二百五十余年もの時間を要した。――私は眼下に広がる真っ白な砂浜を見ながら、百五十年前にこの地域一帯で吹き荒れたキリシタン弾圧下、まさにこの地で生まれ、そして死んでいった若者達の一生を思った。
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