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「自己」が近代文学が拘り続けたテーマであることは言を俟たないが、現代文学は統一され安定した「自己」そのものへの不信から始まっている。ともに時空を「移動」し続ける存在としての読者とテクストが出会う結節点。そこから変容しながらも繰り返し立ち上がってくる主体こそが現代文学が語る「自己」にほかならない。本書は「自己」と「移動」に着目し芥川賞受賞作家のテクストから平成という時代の諸相を読み込む試みである。
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