太陽の門

太陽の門

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出版社
日経BPM(日本経済新聞出版本部)
著者名
赤神諒
価格
2,200円(本体2,000円+税)
発行年月
2021年5月
判型
四六判
ISBN
9784532171629

デビュー3年で主に戦国武将が主人公の11作を刊行し、歴史小説に新風を吹き込む赤神諒氏が、伊集院静氏の休載期間中に日本経済新聞朝刊の小説欄に急遽抜擢され連載した本作は、赤神氏初の現代小説だ。
5カ月後に幕を開ける第二次世界大戦での枢軸国対連合国の戦いの構図を先取りしたスペイン内戦(1936〓39年)が舞台。成立したばかりの共和国政府に対する軍部の叛乱を阻止しようと立ち上がった市民兵とともに銃を取った元米国軍人リックを主人公に、圧倒的に劣勢に立ちながら、徒手空拳で立ち上がった市民ひとりひとりをクローズアップして描くことで、ファシズムとスターリニズムから自由と民主主義を守る戦いと言われるこの「戦争」が、本当は何のための戦いだったのか、を浮き彫りにする。格差や分断が社会を揺るがす現在の私たちをも照射する作品に仕上がっている。
この重厚な物語にエンタテイメント性を加えるのが、主人公リックの設定である。著者が映画史上不朽の名作である「カサブランカ」の前日譚として着想し、映画でハンフリー・ボガード扮するリック・ブレインが本作の主人公という趣向。映画ではイングリッド・バーグマン扮するイルザ・ラントやほかの登場人物たちも登場させて、名ゼリフぞろいの映画へのオマージュとして編み出された創作だ。戦渦で恋する男女の洒落た会話にも磨きがかかり、キザなセリフ、スパイスのきいた皮肉も読みどころである。

加えて、新聞では戦渦の恋が終わるところで連載の幕を閉じたが、連載後にリックのその後が気になるという声が新聞の読者から多数寄せられた。単行本化にあたり文字通り「カサブランカ」の前日譚として、映画の設定の直前まで時間軸を延ばして大幅に加筆、新聞で読んでいた読者もさらに満足感を得られる内容になっている。

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