フランスの精神分析家アンドレ・グリーンは,精神分析の理論と実践,文化と文学の精神分析的批判に関する数多くの論文や書籍を執筆し,「デッドマザー・コンプレックス」や「ネガティブの作業」の概念で知られている。
グリーンは,精神科医としてエーに師事し,1960年代初頭のラカンとの運命的出会いと理論的決別を経て,ソシュール,パースの記号学・言語学の仕事を豊かな発想で精神分析理論に昇華させた崇高な分析家であり,1975年から1977年まで,国際精神分析協会の副会長も務めている。フロイト,ラカン,クライン,ビオン,ウィニコットとの理論的な対話を通して現代精神分析に大きな影響を与えたインディペンデントな思索家でもある。
アンドレ・グリーンの五つの講義で構成された本書は,ウィニコットの研究をしているスクウィグル財団においてなされた講義をもとにしたものであり,ウィニコットの理論を現代精神分析における最も重要な概念へとさらに洗練させている。そして,ウィニコットを読むうえでの最良の解説書であるとともに,グリーン自身の難解な理論に関する入門書とも言えるものである。
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