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『二十歳の原点』の高野悦子や作家・高橋和巳が生きた60年代を詠う歌人の第一歌集。その視線は危機を孕んだ現代をも鋭く照射してやまない。これほどまでに勁き闘いの意志を内に秘めた叙情歌があっただろうか。
喫茶店シアンクレール今はなく荒神橋に佇むばかり
悲しみの同じ空気を吸っていた同じ京都に連帯ならず
似合わないシュプレヒコールくりかえす未だ少女の面影残し
一冊の本が一生を変えてしまうことがある。川俣水雪さんの場合、高野悦子の『二十歳の原点』だった。高野悦子や、サマルカンドを共に旅した人や、京都の送り火を共に見た人へ。川俣さんの歌は、そんな大切な人たちへの呼びかけなのである。(吉川宏志)
初蝶のえふぶんのいちのゆらぎさえ行動予測されていたるも
有る程の菊列島になげ入れよひとつ制度の命終の朝
いまならば間に合うだろう(たぶんだが)積乱雲の湧ける 日本よ
川俣水雪の、時代への危機を孕んだ想念の旅は、時代を戦い主義に殉じた死者たちへ向かって歩幅を速めてゆく。(福島泰樹)
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