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◆成熟に抗して
鬼房は蛇笏賞の受賞の際、自らを「翼を欠いた鳥」に喩え、「永遠の飛翔願望」を抱くと語った。「地を這うばかりの哀しい存在」であり、「土俗に愛憎を傾けすぎる」とも。それは生きることへのしたたかな強さそのものであった。痩身の中には、土俗的なエネルギーが常に湧き立っていた。成熟の誘いに抗するように、必死に「蒼樹」、あるいは修羅にならんとした。と同時に、幼くして故郷を出たという「流民」意識は強く、詩想は遥かな彼方を遠望するのが常であった。
死後刊行された句集『幻夢』には、詩想への思いを隠さず、さらに高みをめざす最後の鬼房の姿がある。明日に春を待ち妄想の中で、永遠なる命を目指すように、大いなる死(生)へと最後の力をふりしぼる。そして、現実のさまざまな枷から解き放され、次なる世へと向かうのだ。
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