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「この狂気の時代に/その狂気に加わるのは耐えられないことだ[…]だがそれに加わらないのは/すべてを失うこと」(第4章より)
19世紀の宮廷詩人が詠じたこの「暗闇の時代の詩」をなぞるかのように、インドネシアの各地で1990年代後半に様々な騒乱が発生。新聞記者としてそれらに遭遇した著者は、魔術と暴力が渦巻く混沌の島々に惹かれていく。
1996年にボルネオ島で起きたダヤク族とマドゥーラ族の民族紛争と虐殺、98年にスハルト独裁体制を崩壊させる端緒となったジャカルタの学生デモと軍の衝突、99年に東ティモール独立を巡って行なわれた住民投票とその波紋など、世界最大級の多民族国家を揺るがしたさまざまな蛮行と混乱が、現場の熱気そのままに活写される。
「これは、暴力と恐怖についての本だ」(プロローグより)東京を拠点にミャンマーやタイ、朝鮮半島などアジア各地で取材を重ね、のちに日本を舞台とするノンフィクション『黒い迷宮』と『津波の霊たち』で評価を確立する知日派ジャーナリストが2005年に世に問うた原点の書。
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