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◆第三歌集
ウェルニッケ野に火を放てそののちの焦土をわれらはるばると征く
私にとって歌とはずっと、失われたもの、決して手に入らないものへの思いを注ぎ込む器だった。それが、この歌集を手に取ってくださった人が抱え持つ喪失や希求と響きあうことがあればと願うのみである。
(あとがき)
◆自選五首
無傷であることに傷つく葉桜の下あたらしい帽子を被り
光年という距離を知りそれさえも永遠にほど遠いと知った
奈落その深さをはかりつつ落ちてゆくくれないの椿一輪
ハーブティーにとかすはちみつひと匙の慈悲それで人は生きられるのに
みなそこのさくらよさくら海が陸(ル;くが)はげしく侵し尽くした春の
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