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筆者がポンティを知ったのは、工学系デザイン学科に配属された時期である(元々は工学部建築学科であった)。「デザイン」という言葉は、魅力的な言葉であるが、誰でも認識しているようで、三者三様、これといった明確な定義がないのがわかってきた。デザイン入門書のようなものならいくらでもあるが、何か違うような気がしながら、それでも何かないかと探していたところに、「デザインとはなにか」と自分で問いかけるようになった。知りたくなったのである。あるとき、電車に乗っているときだったと思うが、感覚とか知覚とかを追えば、なにか手がかりになるものがあるような気がした。そう思っている時に、本屋でM.ポンティを知ったのである。したがって本書は、ポンティ哲学の概説書ではなく、ポンティを通してみたデザイン概念の一端を見いだすことを第一の目的としている。ポンティの専門家から言わせれば、「全くポンティをわかっていない」と叱責されるのは当然だが、どうしても、ポンティからみたデザイン概念を追ってみたかったのが正直なところである。皮肉なもので、概念的な「デザインとはなにか」についての議論には曖昧なデザイナーが大多数である。第二部では、ポンティのいう「共感覚的体験」から日本建築(特に数寄屋・茶室)の空間性について述べ、第三部で、第一部、第二部を踏まえて近代~現代建築を論じ、これからの建築の在り方について考察した。すなわち、本書はポンティからみたデザインの概念定義を志すものである。
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