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人によって語られた言葉がときに当人の何たるかを語るときがある。あの「3・11」での津波の災禍を、「海が牙をむいた」と表現する人もいれば、「自然が伸びをした」と語った人もいた。「牙をむく」や「伸びをする」という言葉そのものが、その語り手自身の海についての暗黙の了解を如実にもの語っており、さらには海をそのように理解するその人の何たるかを、すなわちその人の存在そのものをおのずと言外に語り出している。言葉には存在が宿るのである。本書はそのような立場から、言葉と人との根源的な関わりを思索する挑戦の書である。
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