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科学は現在細分化の傾向がさらに進行し、森林分野においてもそれは例外でない。森林の各事象が様々に細切れ、細分化されているため、各論は進むものの、樹木そのものをとらえる現実の視点からは乖離していく傾向もみられる。
時代は21世紀に入り、森林は脚光を様々な事象で浴びるようになった。木材、林産物の生産をはじめ、土砂崩れや水害の防止などの環境保全は特に注目を受けるようになり、水源涵養、大気清浄などの作用はその重要性を増している。また、森林浴、森林療法に代表されるように保健休養の環境や地域活性化としての意義も高まっている。けれども、その森林環境を形成、構築している主幹、主柱は、やはり樹木である。しかしながら、昨今では、個々の樹木本来の特性を配慮せず、機械的に、あるいは前例を単に踏襲する形で林木を植栽することが多くなった。
「適材適所」という言葉があるように、「適地適木」という言葉がある。個々の人間に個性があるように、個々の樹木にも個性がある。造林、森づくりとは、各木々の消長の確率の事象でもあり、木々同士の組み合わせでもある。つまり、各樹木の特性、そして相性を考えることは基本的に重要なことなのである。特に今後の造林は、従来の植林手法による人工造林だけではなく、そこに加わる自然散布の樹木、つまり「人工更新+天然更新」による手法が考えられる。
そこで、本書では、現在までの日本の代表的な造林樹木の特性を再考して、われわれ日本人の森林、自然、風景を構成し、日常生活にとっても関係の深い代表的な造林樹木をとりあげ、その木々を知り、親しんでもらうことを目的とした。
本書の大きな特徴としては、
・各章のはじめにイントロダクションをもうけ、講義運営の導入をはかったこと
・また、各章の章末問題も充実させ、自学自習や試験対策の充実をはかったこと
・各樹種の生育特性をはじめ、その効用、用途まで記述し、それぞれの樹木の育成、造林の意義とモティベーションを高めたことなどがあげられる。
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