本書は中国復旦大学・戴耀晶教授の名著『現代漢語時体系統研究』の訳書である。“体”(アスペクト)はテンス、モダリティなどと並び、文法を理解する上で避けては通れない重要な研究分野の1つであり、中国語学習者にとってもまた、最初に遭遇する難関の一つが「完了」を表す動詞接辞“了”である。“了”は日本語の「過去/完了」を表す助動詞「た」の用法と一部重なるものの、これと共起する動詞のアスペクト的意味や、目的語(名詞)が数詞と助数詞を含むか否かなど文の諸要素の性質と相関関係があることを理解せずしては適切な使い方ができない。戴氏は中国語のアスペクトを理解するためには、動詞や動詞接辞のみならず、副詞や動詞の目的語を含む、文を構成する諸要素にも考慮する必要性を強く主張するが、それはまさに今日まで受け継がれる中国語教授法にも影響を与えている。また、戴氏は海外のアスペクト研究で影響力のある分析手法も取り入れながらも、独自のアプローチで中国語のアスペクトを体系的かつ包括的に論じている。その訳本である本書は、中国語を専門としない読者にも戴氏の考えをよりわかりやすく伝えるため、丁寧に訳者註を施した。中国語や日中対照研究に関心のある方々に是非ご一読いただきたい。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。