環境中に存在するDNAを調べることで,生物の分布情報を得ようとする「環境DNA技術」と呼ばれる分析手法が近年急速に発展している。環境水のみによる生物調査が実現できる環境DNA手法は,基礎・応用の両面において今後の生態学を大きく進展させる画期的な野生生物調査法として世界的に注目されつつある。国内では,2018年に一般社団法人環境DNA学会が設立された。
本書は環境DNAを体系的に取りまとめた日本初の書籍である。本書は一般社団法人 環境DNA学会員ほか総勢27名により執筆され,環境DNAの研究手法からそれを用いた研究事例や大規模観測,そして新規技術の展望に至るまでを網羅する。これらの先駆的な内容を,大学生,環境コンサルタント従事者などにも分かりやすく紹介し,環境DNAの科学的な概念や知見を広く普及することを目的としている。
本書では,最初に環境DNAの由来や環境DNA研究の歴史を振り返ったのち,両生類,魚類などのマクロ生物の環境DNAを種特異的検出する手法とその応用事例,そして環境DNAメタバーコーディング法と呼ばれる生物群集を網羅的に解析する手法とその応用事例を紹介する。その後,ANEMONEプロジェクトに代表される日本全国における環境DNAメタバーコーディングを用いた大規模観測について紹介する。最後に環境DNA学会の若手・学生会員が思い描く環境DNA研究の将来像について紹介し,今後の環境DNA技術の進展とその応用を展望する。本書には,環境DNAの教科書ともいえるような内容に加え,環境DNA研究の一線で活躍する研究者による最新の研究内容も盛り込まれており,興味深い内容となっているので,ご高覧頂ければ幸いである。
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