談 no.120(2021)

特集:無償の贈与・・・人間主義からの脱却

談

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出版社
たばこ総合研究センター
著者名
平川克美 , 岩野卓司 , 山田広昭
価格
880円(本体800円+税)
発行年月
2021年3月
判型
B5
ISBN
9784880654980

無償の贈与…人間主義からの脱却



バタイユは言っている。生の最も根本的な条件は太陽によるエネルギーの贈与である。地球上エネルギーが満ち溢れ、それを成長の糧にして生物が生存可能なのは、太陽が休みなくエネルギーを贈与してくれているからだ。しかも、この根源的な贈与は一方的なものである。地球上の生物はただエネルギーを受け取るだけで何も返すことはない。だから、これは決して交換とはならない一方的な贈与だといえる。太陽こそが純粋に非生産的な消費を行う例外的なものなのだ。そして、この贈与は地球の生物の物質的な起源であるだけではない。それはまた、人間の価値観あるいは道徳的判断の起源にもなっているという。古代において、無償の贈与のような純粋な消費の行為は人間の理想だった。それが、救済という利益と結びついたキリスト教道徳や利益と有用性に価値を置くブルジョア道徳によって価値の転倒が行われ、生産の方にわれわれの世界の価値は移ってしまったのだ。しかし、その根底には非生産的消費に対する欲望が眠っている。

人間中心の価値観から脱却して、人間を超えた視野を獲得しつつある21世紀の私たちのなかに、この古代に起源をもつ無償の贈与が復活しようとしている。再びバタイユの言葉を引こう。「太陽エネルギーは、自己を消失=破滅する(se perdre)エネルギーなのである」。太陽エネルギーの産物である「私たち(人間)」が、供儀やポトラッチなどを通して濫費の方に向かうのも、もとを辿れば、この太陽の贈与に帰着する。無償の贈与。それは人間以後の世界の未来を暗示する。

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