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豊かな自然と世界有数の農業生産を誇り,大都市からも近く,いまはクルーズ観光が人気のメコンデルタ。しかしここは20世紀最大の動乱の舞台でもある。いくつもの国家が,統計・分類,文書化,マッピング,暴力を用いてこの地域の人々を捕捉しようとした。しかし,そうすればするほど動乱が拡大する。民族的混淆,流動する人・モノ・情報,闇市や徴兵忌避の寺院等々,デルタ社会の生態歴史文化的特徴のなか「国家の介入しにくい空間」が如何に作られるのか,そのメカニズムを詳細な民族誌で解き明かす。
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