" 本書『民具・民芸からデザインの未来まで』という書名は,フランスのデザイナー:レイモンド・ローウィ(Raymond Loewy,1893-1986)の著書であり著名なキーワードである『口紅から機関車まで』にリスペクトして付けられました。レイモンド・ローウィが活躍した時代は,「モノ」の実態がまだまだ「ひとの手」で掴めた時代でありました。一方,現代は「ひとの手」と「ヴァーチャル」が縒り合う時と言えましょう。本書は,そんな民具・民芸,工芸,デザインに関わる過去から現在,未来までを見据えた大きな歴史の流れを俯瞰し,そして接近的な眼差しを向けた専門知と経験値に満ちた多様な論考群で構成されています。
また,本書には「教育の視点から」という副題がついています。それはすなわち,広く美術の教育に携わる26名の視点から,民具・民芸論の中でもいわゆる民芸として市民権を得ている工芸作品に関連する教育事象,史的考察,実践等に重心を置いて論じられているということです。
本書は5つの章から成ります。第1章は人間に根源的に備わったものづくりの原点を論意とする論考で構成しています。第2章は,これからのものづくりとデザイン教育を考える一助となる学術的論考で構成しています。第3章は,特定の地域に根ざす伝統工芸・伝統玩具に関する史的・教育的な論考で構成しています。第4章は,我が国と海外のものづくりやデザイン教育に関する文化的で往還的な思考を促す論考で構成しています。第5章は,本書の副題に関わるエッセイとして構成しています。このように,各章全体を穿貫する概念として「民具・民芸からデザインの未来まで」が自ずと浮かび上がる構成になるように,この本は編まれています。
本書は,美術教育に携わる研究者だけでなく,学校現場の教員・実践家や学生も読者の対象であることを見据えて製作しています。本書の出版が斯学のさらなる発展と充実に寄与できますことを祈念しております。"
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