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したたか、 しなやか、 しながわ
人の心にも、闇と海。
――――柳家喬太郎
『 客はつかの間の夢に金を払うんだ。 女郎の本音なんざ知りたくもなかろうさ 』
元最上位の遊女・お染。寄る年波には勝てず、馴染みの客たちも離れてしまい、いまや衣を新調するための金にも困るようなありさま。
元来の勝気な性格もあって、ひと思いに死んでしまおうかと思うが、金に困ってひとり死んだと言われることはあまりにりも悔しく、ならは、心中をしようと考える。
独り身で大食らい、ぬけている金蔵を相手に選び、手練手管で、ついに心中の約束を取りつけるのだが――
現在の高座では、お染が金蔵を川に突き落とす場面、金蔵が助かって世話をしてもらっていた親方の元に幽霊のように姿で現れる「上」までしかかからないことが多いが、
本作では金蔵が親方たちの力を借りてお染に仕返しをする「下」までをお染を中心にした物語に再構成した意欲作。
【 妓楼に生きる女の矜持と哀しみ シリーズ完結! 】
小説 古典落語
第1冊『小説 真景累ヶ淵』(奥山景布子/監修 古今亭菊之丞)
第2冊『小説 牡丹灯籠』(大橋崇行/監修 柳家喬太郎)
第3冊『小説 らくだ』(並木飛暁/監修 桂文治)
第4冊『小説 西海屋騒動』(谷津矢車/監修 柳亭左龍)
第5冊『小説 品川心中』(坂井希久子/監修 柳家喬太郎)
◆ 著者について
坂井希久子(さかい きくこ)
1977年、和歌山県和歌山市生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年「虫のいどころ」で第88回オール讀物新人賞受賞。
2017年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』で第1回高田郁賞、第6回歴史時代作家クラブ新人賞受賞。
代表作に、『居酒屋ぜんや』シリーズ、『ハーレーじじいの背中』『若旦那のひざまくら』などがある。
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