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中央線の前身である甲武鉄道が新宿~立川間を走り出したのは明治22(1889)年、大日本帝国憲法が公布された年のこと。赤煉瓦駅舎の東京駅の開業は大正3(1914)年で、第一世界大戦が起きた年。走り始めてから約130年。中央線は日本の近代化と風雪の時代を歩んできたことになる。
本書では東京~高尾間を取り上げたが、走り続けた年月を思えば中央線は成熟路線であり、沿線に変化は見られないものだ。しかし、中央線は東京駅を始めに沿線のそこかしこで駅と街の表情が今も変わり続けている。
新宿駅西口では小田急百貨店を核にした超高層駅ビル計画が動き出し、中野では西口駅舎建設が動き出している。東小金井という地味な駅にも、昭和40年代は自動車鉄道輸送の拠点となった北口の再開発事業が動き出し、武蔵小金井では沿線最大級といわれる再開発事業で南口の装いは一新した。ツインタワーが屹立する国分寺北口も交通広場が整備され、中央特快停車駅にふさわしい駅姿になった。変化の波は高尾にも及び、駅周辺整備事業で長年馴染んだ北口駅舎の移設が決まった。十年一昔というが、一年ぶりに沿線各駅を歩いてみて、その変わりように驚かされたものだ。
国立では、鉄道総研への引き込み線跡が緑道として整備されていたが、本書では今は伝承の世界になりつつある中央線に設けられていた引き込み線の地図を掲載した。沿線随所で見え隠れする歴史ドラマとともに、記憶も定かではなくなった引き込み線があった時代に思いを馳せると、沿線歩きの面白さも増幅されるというものだ。
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