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学校時代をちょっと思い出してみてください。教室で手を挙げて発言したり、発表したりしたことはありますか?
おそらく、小学校低学年のころはみんな競うように挙手したけれど、学齢が上がるにつれて限られた生徒だけになっていったこと、中・高ではほとんど誰も手を挙げなくなったことなどが思い起こされるのではないでしょうか。本当は、成長につれて言いたいことは増えるし、自分の発言に責任をもち、他の人と意見交換をし、よりよい考えを見いだすことが必要なのに、それができなくなってしまうのはなぜでしょうか?
単に年齢とともに羞恥心が増すだけではないと思います。現代は子どもも大人も、誰もが心の底に言いたいことを抱えながら、「空気を読んで」言い出せずにいます。問われたら「正しい答え」を言わねばならない、さもなければ黙っているに越したことはない、という「常識」。多数派の意見に合わせた方が楽だという考え方。出しゃばってもいいことはないという雰囲気。そうした目に見えないものが、教室を、学校を、もっと言えば日本全体を覆っているように思います。
自分の考えを口にしてみたい、それについて人と話してみたい、そんな思いを教室で大切に育むにはどうすればいいのか。口をつぐませるような教育をやめ、子どもたちが自ら「声」を発し、それを起点として夢や思いを学友と話し合い、実現に向けて努力していく方法を身につけられるような教育はどうすれば可能なのか。この問いへの答えが本書にはあります。国語を中心に各教科での授業実践の様子や具体的方法、ポイントが詳説されています。読者はきっと、大人顔負けの発言をし、自分の考えを実現していく生徒の姿に驚かされることでしょう。教員の方々には、ぜひ本書を手に取り、閉塞した空気を変える授業を明日からでも実践してみてほしいと思います。あなたの生徒たちも、自分の「声」を発するチャンスを待っているはずです。(いいむら・やすし 上越教育大学教職大学院)
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