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1936年2月26日早暁、陸軍青年将校らの一団約1500名が蹶起した。標的のうち岡田啓介首相と牧野伸顕前内大臣は難を逃れたが、斎藤実内大臣、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎教育総監が殺害され、鈴木貫太郎侍従長が重傷を負った。
首謀者らは佐郷屋留雄の浜口雄幸狙撃、血盟団事件、五・一五事件を先駆捨身と称揚。襲撃後は独自の国体観による「待ちの姿勢」をとり天皇の嘉納を期待したが4日目に帰順。軍法会議を経て処刑された。
「クーデター未遂」「統制派と皇道派の抗争」「政治腐敗と農村の窮状を見かねての義挙」「真崎甚三郎黒幕説」。事件についてはいくつもの総括があったが、実相は理解されているだろうか。本書は、史料を虚心に読み直すことで事件のありようをとらえる試みである。首謀者らが「皇道派青年将校」だという巷説は正しいのか。真崎黒幕説に便乗することで、皇道派と青年将校をまとめて退治したい幕僚・統制派側の作為ではないか。「待ちの姿勢」とは何か。いくつかの論点についても考察する。
社会の不正を憎み、困窮する人々の救済を天皇親政で実現しようとした将校らに成功の余地はなかった。そして事件は、彼らの思いもよらない帰結を招いたのである。
「軍当局は[…]吾人を犠牲となし、吾人を虐殺して而も吾人の行へる結果を利用して軍部独裁のファッショ的改革を試みんとなしあり、一石二鳥の名案なり」(安藤輝三)。
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