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重松清氏推薦! 第一回(2020年)京都文学賞受賞作家、待望の受賞後書き下ろし第一作!
社会の一隅を照らす作家の原点であり、人間存在の深淵を照らす、涙があふれる感動作である。
聾唖者と盲人、貧しく不遇な二人の老人が出会い、掌に触れ合うことで会話しながら共生し、見出した生きる歓び。
厳しい現代社会を生きる私たちが求めてやまない、互いを思いやる心の温かさ、美しさが、読者の胸に仄かな灯をともす。
<あらすじ>
江戸の片隅。生まれつき耳が聴こえず、口もきけないゲンゾウと、眼の見えないソウイチロウはある日出会った。
音を知らず、言葉も知らない、捨て子のゲンゾウは、生きる意味さえ知らず、もの心がついた頃から物乞いをして生きてきた男。ソウイチロウは、元は御家人だったものの、視力を失ったことから妻娘と離別。過去を捨て、按摩を生業とする男。
川で溺れかかったソウさんは命を救ってくれた住む家もないゲンさんを小屋に招き入れ、共に暮らすことを思い立つ。互いの気持ちを掌に画を描き合うことで伝え、心を通わせる日々の中、二人は思いもかけずに赤ん坊を拾う。その子を胸に抱くと、これまで感じたことのない奇妙な力がじりじりと身内から湧いてくるのを覚えるのだった。
そして、生きる歓びを分かち合いながら一心に娘を育てるゲンさんとソウさんだったが・・。
<本文より>
互いに枯れ枝のような手をしっかりと結んで、二人は人混みの中を歩きだした。周りを行き交う人々はゲンさんとソウさんに次々にぶつかり、時に罵って過ぎていく。だがそんなことは気にも留めない。ゲンさんはソウさんの眼となり、ソウさんはゲンさんの耳となったいた。握り合った手が離れれば、はぐれて一生会うことができないかもしれない。二人はしっかりとつないで、覚束ない足取りで歩いて行った。
青空が眼に沁みる。その深い青さを見てゲンさんは「きっと大丈夫だ」と思った。お天道様とソウさんさえいれば生きていけると、それだけを確信した。
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