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夏目漱石の高弟として多くの名随筆を残した寺田寅彦は、物理学者としてもスケールの大きい体系だった思想をもっていました。そのエッセンスをまとめたものが、今から百年前に書き起こされた『物理学序説』という未完の集大成です。本書は、“物理学者 寺田寅彦”の方法序説ともいえる『物理学序説』を、現代物理学の視点から新たに読み解いていきます。
また対談では、寅彦の物理学への思想の背景にあった漱石との関係などを、文学や歴史の観点から探っていきます。『物理学序説』原文および注釈に加え、門下の中谷宇吉郎による後書などの附録も充実させて収載。物理学を学ぶ人、研究する人、それぞれが自身の物理観を育て、反省する上での格好のビタミン剤となる書です!
「現代の理論物理学は、高度に数学化されている。学問の発展の段階では、その数学化が威力を発揮してきたことは否定できないし、実際に一般相対性理論では大成功をおさめた。肌感覚では一九八〇年代からその傾向が極端になり、かつやり尽くされたように思うが、そう思うのは私だけではないようだ。ここで一旦立ち止まり、集団思考から社会的距離をとり、自然を直視して、数学の言葉でなく自然言語で物理を語り、研究の新しい芽を探してみてはどうだろうか?
一方、実験も大規模になり長期間を要する「事業」へと変貌して久しい。そこには、個人の発想を生かすチャンスは少なくなる。それについて悩む若い研究者も多い。その中で自分の頭で考えて試してみたい人たちには寅彦が闇夜の道を照らす行灯になると思う。」(本書「はしがき」より)
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