取り寄せ不可
右往左往のこの時に「言の葉のそよぎ」を集め見えてくる木はあるだろうか。しかし誰もが不安と迷いの中、生きることこそが仕事だと、なんとか日々を過ごしてきたのだからと前を向き、自粛の間も変わることなく青々としたその姿に、唯一息をつくことのできた場所『母の庭』をタイトルに決めた。
(あとがきより)
■作品紹介
五月闇心ふさぐ日湯をわかし玉ネギスープの渦を見てゐる(市原)
少女らの歌ふ聖歌のあやふさに雪の香りの水仙うつむく
靴紐をきゆつと結んで外に出る今日おきることこぼさぬやうに
地に還るはしきものたち朝に充つ空蝉かなぶん白さるすべり
墓浄め君が好物鮨見れば巻き戻される病室の日々
やはらかくどこかつながる人々はト音記号の丸みの中に
シルバーのフライ返しは幾千の卵をすくひ朝を励ます
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