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本書は、現代沖縄の霊的職能者である「ユタ」に改めて着目する。ユタの研究は民俗学や人類学に限らず、精神医学、心理学、宗教学、社会学などの幅広い分野で行われ、1950年代には沖縄の宗教研究においてシャーマニズム現象に関心が向けられるなど膨大な先行研究がある。しかし、トランス状態で治療を行うのではないユタ、従来の先祖観を持たないユタ、未来のヴィジョンを伝えるユタ、伝統的なプロセスに即さないユタ、前世観をもち自らを「霊能者、シャーマン」と認識するユタなど、従来のユタ概念ではもはや説明のできない人々については、これまであまり着目されてこなかった。
そこで本書では、「サーダカウマリやカミダーリなどユタの成巫過程と類似する点を持ちつつ、超自然的存在と直接交流・接触しながらユタ以外の新たな役割を生きる人々」のことを〈ユタの境界を生きる人〉として新たに定義する。そして現代沖縄、特に宮古島を主な調査地とし、ある女性のライフヒストリーから、ユタの境界を生きる人のどのような点がユタの成巫過程と類似するのか、神仏や龍などの超自然的存在と、どのような直接交流・接触がはかられているのか、そしてユタ以外の新たな役割が、どのように生きられているのか、憑霊や脱魂の実態も踏まえた上で、解き明かすことを目的とする。
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