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刀を持たぬ剣術遣いと刀剣蒐集妖女との邂逅
藤田五郎翁は刀を手にし、表に飛び出した。斬殺された男ふたりが道端に倒れている。
傍に立ち、血刀を提げた巨漢が唸り声を上げた。転瞬、ふたつの刃が火花を散らす。それも束の間、巨漢が隙を突き、姿を消した。
残された藤田が目にしたのは、亡骸の首元に彫られた蜘蛛の入墨、周囲に転がる数珠玉だった……。「立て続けに妖刀が出没して、人を斬っている」との噂を聞いた、東京帝国大学理学部教授の山川健次郎は、事件の真相を突き止めてほしいと、加能碧一と行成光雄に依頼した。
ふたりは、梁山泊屋敷と呼ばれる〔水城よろづ商会〕に出入りする用心棒コンビなのだ。刀を持たない剣術遣いの碧一と、二振の短刀と棒手裏剣を全身に仕込んでいる光雄は早速、刀剣蒐集家ウィルソンの邸へ赴いた。
ウィルソンが蔵で保管していた四谷正宗こと源清麿が血染めになっていたのだという。刀の装飾には蜘蛛が施されていたらしいが、前の事件を鑑みると、近頃一部の富裕層を取り込みつつある謎の組織〔蜘蛛の会〕を主宰し、人知を超えた力を使うと言われる妖女、多摩峰トワ子が関係しているのか?
剣光疾り、太刀風駆ける、書き下ろし大正ノワール日本刀アクション!
【編集担当からのおすすめ情報】
デビュー作『姉上は麗しの名医』で、日本歴史時代作家協会の文庫書き下ろし新人賞を受賞した、新進気鋭の作家が放つ、渾身の大正時代剣劇です!
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