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この本は『日本政治思想史』の続編である。前著は幕末から第二次世界大戦までの政治思想史を描こうとして執筆を始めたのだが、たいへん大きなページ数になりそうなのでいったん中途で終えた。そして本来なら前著におさまるはずの部分が一冊になって本書になっている。
本書の第一章と第二章は、国際環境への適応という観点から政治思想史をとらえている。これは前著にない大きな欠落だったし、国際観という視点で明治の思想をとらえる研究もそれほど蓄積していないように思う。それゆえにこのテーマに挑戦したのだが、この部分を書きながら、わたしはいかに軍部とりわけ陸軍の国際観が危なっかしかったかをあらためて確認している気持ちになった。
明治の日本が生きたのは帝国主義の時代だったから、軍人は戦国大名のような発想を持っていなければならなかった。だが少しでもそういう発想を持ち得たのは、たかだか山県有朋から桂太郎や寺内正毅の世代までであって、それ以後になると軍人として持つべき知見を持っていたのは宇垣一成くらいだった。山県、桂、寺内にしても、毛利元就や武田信玄にくらべ得る知見を有していたかというとかなり怪しい。身の丈に合わない軍備拡張、人心収攬を度外視した植民地経営などなど、そのつけを、日本人は二一世紀の今日になってもいまだに払わされている。(「あとがき」より)
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