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語録や公案集にない燈史の資料価値とは――
現存最古の禅宗燈史である『楞伽師資記』から北宋初において唐五代の禅宗を総括した『景徳伝燈録』に至る唐宋期の燈史六種について、その個性を浮き彫りにし、祖統説の発展史からこぼれ落ちた思考の断片を救済する。敦煌文書や高麗古版本の読解を通して描き出されるのは、禅宗教団の根幹となる伝法・祖統の問題から、より通仏教的な実践や信仰へと広がる多彩な禅仏教の姿である。
【目次】
序 章
第一部 唐より北宋初に至る燈史の研究
第一章 『楞伽師資記』考――『楞伽経』と『文殊説般若経』の受容を手掛りに――
第二章 『伝法宝紀』の精神
第三章 『歴代法宝記』考――山居修道と居士仏教――
第四章 『宝林伝』の宗教世界――「無修」と「因果」――
第五章 検證不可能な悟り――『祖堂集』仰山章の伝法思想――
第六章 仏法の埋没――夾山善会一門の宗風と法統意識――
第七章 『景徳伝燈録』における「禅」と「教」
第二部 禅宗における伝法思想の諸問題
第一章 阿羅漢は祖師になれるか――西天祖統観の展開――
第二章 伝法偈と禅宗思想
第二章附論 「伝法偈」成立についての札記二則――『六祖壇経』と『宝林伝』を主題として――
第三部 禅宗史書とその周辺における諸問題
第一章 『付法蔵伝』の主張とその受容――大住聖窟二十四祖像を例として――
第二章 悟れなかった人々――禅律双修者の祈りと救い――
第三章 禅宗と仏舎利信仰――『宝林伝』摩拏羅章に見える阿育王塔説話を手掛りとして――
第四章 『曹渓大師別伝』の受容と慧能理解――仰山慧寂の周辺を例として――
結 語
あとがき
図版出典・初出一覧
索引
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