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「そこまでして幸せになりたいか? もう、面倒じゃね?」っていう人類の本音が、たくさん読めて幸せです。――最果タヒ
こっそり書いてみたくなる。情けなくて後ろめたい「夜」のこと。昼と夜がつながらない人生のこと。 行き場を失った小説にはそんな力があった。――こだま
「小説を書きたい」とつぶやくあの子に近づきたくて僕はいま“夜のこと”を書いている――。
作家のpha(ファ)が自らの恋愛遍歴をベースに小説を書き始めたのは、“あの子”と文章を見せ合うためだった。
手をつないだだけで気持ちいい女性、部屋のいたるところにカッターナイフが置いてある女性、上下に揺れながら彼氏ができたことを報告してくる女性。
これまでに出会ってきたさまざまな女性たちのことを思い浮かべながら小説を書いては送る。
“あの子”には早々に告白して振られてしまうが、それでも関係性を保とうと書き続けた。
本書は同人誌即売会・文学フリマ東京で発表され話題を呼んだ『夜のこと』(全二巻)を大幅に加筆修正し、書き下ろし作品を加えて一冊にまとめた恋愛短編集。
phaにとってこれが初の小説となる。
<本文より>
今年の終わりに僕は四十歳になる。人生で一番恋愛沙汰が多かった三十代が終わろうとしている。
歳をとるにつれて、少しずつ恋愛感情や性的衝動が減退してきているのを感じていた。ならば、記憶と性欲が薄れてしまう前に、体験したことを書き残しておきたい、と思ったのだ。
シェアハウスで真上の部屋に住んでいた女性の話。ネットで知り合っていきなりセックスをした女性の話。カッターナイフをいつも手にしていた女性の話。夫と彼氏が両方いた女性の話。
そんな話を次から次へと書いては、僕は彼女に送り続けた。恋バナが好きな彼女は、送るたびに「面白い」と言ってくれた。
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