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昭和三十六年、日本の映画史上に
残されていない幻の映画があった――。
一人の少女に夢を見た、男たちの物語。
フリーライターの南比奈子が取材することになったのは、伝説の映画プロデューサー、上野重蔵。彼には不可解な謎があった。文芸映画の巨匠として名を馳せていた五十年前に突如、表舞台から姿を消したのだ。数年後、映画界に再登場したのは、なんとポルノの製作者としてだった――。取材の中で比奈子は、上野が製作したという邦画史上存在しないはずの映画の存在を知る。百年に一度の女優のデビュー作となるはずだった本作が、完成後、上映取りやめになったことも。取材を続けるうちに、上野重蔵という男と幻の映画の全貌が次第に明らかになっていく――。
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