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戦後日本の問題の本質をことごとく抉り出し今なお新しい批評家福田恆存の「自伝」といっていい文章があった。福田恆存全集(全8巻、文藝春秋)の後書にあたる「覚書」は家族のこと、学生時代、交友関係はもとより劇団設立やチャタレー裁判、論争など平易なことばで綴っている。また、覚書6は「フィックションとは何か」という最後の論考としても読める。神も歴史も国家も、そして「自己」さえフィクションにすぎない。が、だからこそ「創造物」であり「建造物」で、それは一人ひとりがその崩壊を防ぐためにフィクションを作り上げていく努力をしなければならないと説く。福田恆存による福田恆存入門である『福田恆存評論集』(全7巻、文藝春秋)の後書も併録し、いま福田恆存論で脚光を浴びる気鋭の文芸批評家・浜崎洋介氏の解説を加え、福田恆存の「人間観」に光を当てる。
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