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国家の歴史観とアイデンティティの変化
本書は、18世紀半ばに始まり文学・政治・宗教・建築・絵画の領域に広がった、過去を回復し新たに中世に範を求める動きを、文学に現れた変化を縦軸としてたどるイギリス文化史である。
1666年のロンドン大火災で焼失したゴシック様式のセント・ポール主教座聖堂は、古典古代に由来する近代様式で再建されることになった。ところが、1834年に国会議事堂が焼失すると、庶民院はこれを「国民様式」で再建すべし、それは「ゴシックあるいはエリザベス時代様式」である、と規定した。中世に対する見方の、この革命的変化はなぜ、そしてどのように起こったのか。
従来はゴシック・リヴァイヴァルの建築の分野でもっぱら語られてきたこのテーマを、本書ではヴィクトリア女王の治世の数世代前から数世代後まで、内容はスコット、テニスンら多数の作家、ピュージン、ロセッティ、モリスやラスキンをはじめとするラファエル前派をめぐる人々、ディズレリ、青年イングランド派、オックスフォード運動、ニューマンら、諸芸術を超えて社会と宗教に関する新しい理想の誕生まで、より包括的な考察を行なっていく。
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