目にするものはすべて詩であり、手に触れるものはすべて痛みである。
不正義、不条理に満ちた世界で人びとはいかに生きるか。
歴史に翻弄される民族を見つめ、人類の希望を「橋」の
詩学として語り続けたノーベル文学賞作家アンドリッチ──
「橋」、短編小説八篇、散文詩『エクス・ポント(黒海より)』
と「不安」、エッセイ三篇を収録した精選作品集。
歴史の不条理を、若きアンドリッチは身をもって体験した。第一次大戦中の思想犯としての獄中生活は、戦争という外的世界を凝視させると同時に、「幽閉された者」の精神的な内的世界へと作家を招き入れる。歴史と魂の問題は、作家の生涯を通じて、詩学を支える二本の柱となった。この詩学の魅力は、新現実主義と形而上主義の両面を持ちあわせ、見える世界と見えない世界を結び合わせる力にある。集団と自我、天と地、魂と肉体、異なる二つのものを引き裂くもの、〓ぎ合わせるものに、作家は光をあてる。アンドリッチの問いかけは、人はどう生きるべきかではなく、人々はどう生きるかという人類的な問題である。──「訳者解題」より
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。