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本書の前に、王族のありのままの姿やなにげない日常を、彼らの肉声やよろこびとかなしみを、城門の外へ伝えた本はなかった。この本を書いたのは〈クローフィー〉。生まれた時は誰ひとり予想しなかった女王の位に25歳でつくことになるエリザベスと、妹マーガレットの家庭教師として、国王ジョージ6世一家と17年を宮殿でともに暮らし、女王の若き日の重要なシーンのすべてに立ち会った女性であった。
王女エリザベスのご成婚とともに家庭教師の任を離れて数年後、彼女は筆を執り、二人の王女と過ごした日々をなつかしく書き綴った。現代からみれば、暴露本などという括りには入りようもない本書の刊行直後、王室は、17年間家族同然に遇し、ともに暮らしたクローフィーとの関係を、静かに、永久に、絶った。彼女がおかした、たったひとつの〈罪〉は、国王一家とともに過ごした年月を、王族との健全な距離感を保ちつつ、誠実に、愛情こめて書き綴ったことだったのだが……
「リリベットは私の誇り、マーガレットは私のよろこび」――父王ジョージ6世の言葉が伝えるとおり、まったく異なる個性をもった、二人の王女。結婚によって、いずれは王室を出ていくはずだった王女たちは、兄エドワード8世に代わる突然の父の即位にともない、バッキンガム宮殿での新たな生活を踏み出す。
戦前の古風でやさしい子ども部屋の世界から、第二次大戦下のウィンザー城での疎開生活、終戦、社会や値観の急激な変化をとげた戦後へ――特別な時代を、特別な場所で、特別な人々とともに生きた家庭教師、マリオン・クローフォードによる回想録。
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