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物理学者フェヒナー、進化生物学者ヘッケル、そして発生生物学者ドリーシュ。本書はこれら実証主義的自然科学者としての出自を持つ3名が、「ネオ・ロマン主義的自然哲学者」へと変貌していく消息を追うものである。
自然科学は、ガリレオ・ガリレイに端を発する世界の数学的・数量的把握へと帰着する。フェヒナー、ヘッケル、ドリーシュはしかし、この数学的自然科学から出発しながら、世界の質を問う自然哲学へと移行する。フェヒナーは「植物の魂」の生活を語り、精神物理学から「物質に宿る魂」を導出、魂の存在とその不死を説く。ヘッケルはダーウィンの進化論を奉じ、キリスト教の神を廃したのちに、自然即神という一元論的宗教へと移行する。ドリーシュは、機械論の圧倒的優位の中で、ほとんど廃絶されていた生気論を復活させようとする。
さらに本書は、フロイトの心理学におけるフェヒナーとヘッケルの深甚な影響を跡づけ、ホフマンスタールとトーマス・マンの文学における自然哲学的思考を剔出する。また西田幾多郎、夏目漱石および稲垣足穂がフェヒナーをどう読んだかにも言及する。
はたして「ネオ・ロマン主義的自然哲学」は、啓蒙から神話への頽落なのか、あるいは道具的理性による人間疎外からの救済なのか。結論部ではスピノザ、フッサール、アドルノ/ホルクハイマーを援用し、「ネオ・ロマン主義的自然哲学」の思想的布置を展望する。
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