抗血栓療法ー日常臨床での疑問に応える
1~2日で出荷、新刊の場合、発売日以降のお届けになります
抗血栓療法は、抗血小板療法と抗凝固療法に分類される。
抗血小板療法は、主に動脈系のアテローム血栓症を予防する目的で、血小板凝集を抑制する薬剤を用いる。一方、抗凝固療法は、主に静脈系や左房などの血栓塞栓症を予防する目的で、凝固因子を阻害し、赤血球やフィブリンによる血栓凝集を抑制する抗凝固薬を用いる。
抗血小板薬には、古くから使用されているアスピリンに加えて、冠動脈疾患患者に対してチアノピリジン系薬剤が登場し、薬剤溶出性ステント挿入後や急性冠症候群治療後の一定期間は2剤併用療法(dual antiplatelet therapy: DAPT)が行われる。しかし、DAPTにより予後に影響を与える出血性イベントが多くなるため、近年の大規模臨床試験の結果からDAPT期間は可能な限り短縮する傾向にある。抗血小板療法は、冠動脈疾患以外にも、アテローム血栓性脳梗塞、末梢動脈疾患でも広く普及している。
抗凝固薬としては、第II、VII、IX、X凝固因子を阻害するビタミンK拮抗薬(ワルファリン)が、心房細動による心原性塞栓症の予防や静脈血栓症、人工弁(機械弁・生体弁)に対して古くから用いられてきた。2011年から、本邦でもトロンビンまたは第Xa凝固因子を選択的に阻害する4つの直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)が登場した。DOACは、血中モニタリングが基本的に不要であること、食事の影響を受けにくいこと、4つのDOACの大規模臨床試験でワルファリンに比べて頭蓋内出血などの大出血が少ないことなどから、本邦でも広く使用されている。その後も、アブレーション周術期のDOACとワルファリンの安全性と有効性を比較した臨床試験などが次々と発表され、ますますその適応が広がりつつある。一方で、超高齢化社会に既に突入した本邦では、多疾患を併存した患者の増加によって、例えば、虚血性心疾患に心房細動を合併した場合、抗血小板薬と抗凝固薬を併用しなくてはならない場面が増え、出血リスクの増大が問題となっており、これらに対する対策も重要な課題である。
本特集では、それぞれの領域でご専門の先生方に、近年の大規模臨床試験のエビデンスや実臨床での経験に基づいて、抗血栓療法について解説していただいた。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。