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障がいのある子や病気の子のいる家庭は、父親、母親ともに日々戦いの連続である。できれば幼稚園や保育所に、少しでも子どもを預かってほしい。一方で子どもも、同年代の子どもたちと一緒に生活する体験が非常に重要な時期。ところが現実には、障がいが重度であればあるほど、病気が重ければ重いほど、どこの園も入園させてくれない。結局、20か所、30か所と園を回って断られ続ける親がたくさんいる。そうした親が、最後の最後と考えて柿の実幼稚園を訪れる。園長の小島さんはどんな子であっても、いいですよ。いつから入園しますか?」とごくあっさり答える。お母さんたちはみな、その場で感極まって涙をあふれさせる。そんなふうにやっとの思いで入園させてもらえた子が、大阪や和歌山から、家族ごと引っ越してきたというケースは数多い。発達障害の子、車いすの子、寝たきりの子、酸素ボンベを常時放せないなど手厚い医療行為が必要な子など、教育困難児童はさまざまだが、本書では、その現場であったほんとうのエピソードと、柿の実幼稚園が行ってきたさまざまな努力を紹介する。山の山腹一帯を占めるアスレチックのような園内は小島園長が大けがをしながらもすべて手づくりでつくった最高の「遊び場」だが、2日にわたって繰り広げられる大運動会は見もの。圧巻はリレーで、障がいのある子も病気の子も、全員が参加する。障がいのある子が先生の手助けを得て走りきって喜ぶ姿には胸を打たれるし、そのために何人もに追い抜かれた次の子が、その子のために必死で駆ける姿には胸が熱くなってしまう。「障がいのある子も病気の子も、一人ひとりみんないろいろ。体の不自由な子、大変な子は助ければいい。みんないろいろで、みんな友だち」――この幼稚園の卒園児は、みんなそんなふうに考えて小学校に巣立っていく。そんな幼児教育だから、健常児の親たちの多くが柿の実幼稚園に子どもを入れたがる。すべての親と幼児教育者必読の1冊。
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