電波システム工学

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出版社
コロナ社
著者名
電子情報通信学会 , 唐沢好男 , 藤井威生
価格
4,290円(本体3,900円+税)
発行年月
2020年10月
判型
B5
ISBN
9784339018752

火星基地局と通信をしたい、無線にしますか?有線(光ファイバー)にしますか?という質問にどう答えますか。 “火星と地球を光ファイバーで結ぶことはできっこないのだから有線は無理、無線しかない” という答えは横に置いておいて、もし、物理的にそれができたら、ということで。光ファイバーが低損失(1kmで数%の損失)で、きわめて優れた伝送媒体であることは良く知られている。それが火星まで引けるのなら、可能性もあると思うだろう。

ここにA地点とB地点を結ぶ回線があり、A地点から送った信号は受信点Bで1/1000の電力になるとする。その距離を2倍にして、受信強度を同じにしたいなら、送信電力をどれだけ増やせばよいか。ファイバーは1000倍にしなければいけないのに、無線(電波)は4倍ですむ(フリスの伝達公式)。さらにその2倍の距離にすると・・・。このようにして火星まで結ぶには、光ファイバーであれば、とんでもない数値になり、それゆえ、弱くなった信号を増幅する装置が一定間隔で膨大な数必要になるのに対し、電波の減衰はそれほどでもない。

これは、伝搬メカニズムの違いである。光ファイバー通信路は距離dに対して、10^-αd (α: 媒質に依存する減衰係数)のように、指数関数的に減衰するのに対して、電波ではd^-2で、すなわち、距離の2乗に反比例して減衰する。無限の彼方に情報を伝送するには、すなわち、冒頭の質問の答えとしては、電波が適している(=電波しかない)ということになる。このように、電波は宇宙の果てまでもメッセージを届ける力を持っている。宇宙のどこかに知的生命体がいるなら、そのメッセージを受け取ることができる。電波のチカラである。映画「コンタクト(Contact)」の世界が、まったく荒唐無稽(SF)とも言い切れない。

本書はこのような電波が活躍するシステムを扱っている。基礎固めなくして、応用編に位置づけられる「電波システム」を語れない。基礎編は、レクチャーシリーズの他書で触れられることが少なかった電波伝搬やアレーアンテナ技術を中心にまとめている。応用編では、多岐にわたる電波システムを総花的に紹介することを避け、電波の役割が現代に生き未来に続く主要な六つのシステム技術に絞っている。技術の変遷がめまぐるしい分野にあっても、時代に左右されない内容・根幹に横たわる不易の技術を取り上げ、20年後(2040年代)に学ぶ学生に「この本は内容が古くて役に立たない」と言わせない、と言うのが筆者等の意気込みである。

もう一点。電磁気学を含めて電波技術の発展には、その折々に道を切り開くパイオニアがいて、彼等は総じて意思も個性も桁外れであった。その生き様に触れる意味で、テーマに関連するコラム(談話室)を随所に入れている。学生諸君に、人生はこうありたいと燃えるものを感じて欲しい願いを込めて。

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