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GDPは経済の実態を示しておらず,有効な経済指標ではないのではないか。本書はこのような問題意識から出発し,現実の国民経済計算を分析した成果である。国民経済計算は17世紀のペティによる政治算術に始まり,歴史的には時代の政治的配慮と相即して発展した。
GDPの計算の国際基準が1993年と2008年に改訂され,さらに金融部門の勃興により,国民経済計算体系は大きな影響を受けた。従来の生産分門を中心とするGDPに対し,新たに金融,保険,不動産などを組み込むことにより,その実態が大きく変容した。著者はGDPから金融サービスを控除したFGDPの概念を使い,GDPの金融化の理論的・政策的意義を分析,GDPよりFGDPの方が,経済現象を整合的に捉えるうえで有効なことを示した。
GDPは数多くある経済指標の中でも,実際の生活に浸み込んだ代表的な指標であり,経済成長をはじめ政策論の基盤をなすものである。それが実体とかけ離れ,政治や市場の影響を受けているならば,見過ごすことができない事態であろう。大学の授業もなく,専門の研究者も少なくなり,EU,OECD,IMF,世界銀行など国際的な金融機関との関連が強まる中,グローバル社会の下でますます重要な役割を担っているGDPのあるべき姿が,いま問われている。理論,計量,数理経済学や経済思想の研究者たちがこの問題に取り組むことが期待される。
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