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母のレシピは、幸福の“おまじない”。
姑とのトラブルから婚家を飛び出した高坂美月は、自活するため、学生時代の先輩・北條を頼って学習塾で働き始めた。ある日、家庭教師として派遣された先で出会ったのは、中学受験生の倉橋理穂と弟の悠太。絵本作家だという母親は、海外留学中で不在にしているらしい。母親のレシピイラストが飾られた家は、一見、幸福そのものだ。だが、理穂は美月に壁を作り、心を開いてくれない。
美月は北條の力を借りながら、理穂に少しずつ歩み寄っていく。ようやくその距離が縮まったとき、理穂と悠太から、一緒に夕食を食べようと誘いを受けた。だが、その言葉に美月は臆してしまう。料理研究家の姑は、美月に“きちんとした”料理を強いた。そのあまりの強硬さに、美月の心は怯え、萎縮し、閉じこもってしまった。そして、包丁を持つことができなくなってしまったのだ――。
母親不在の食卓を囲むことになった美月、理穂と悠太。それぞれ、どうしても言えない“秘密”を抱えた三人は、絵本に描かれた幸せになるための“おまじない”を探してゆく。
「第1回日本おいしい小説大賞」隠し玉。良い嫁とは、良い母とはなんだろう……。号泣必至、悩み多き女性たちに送る救済の物語。
【編集担当からのおすすめ情報】
「第1回日本おいしい小説大賞」隠し玉!
現役の塾講師でもある著者が、丁寧な筆致で描き出す子どもたちとの繊細な交流は読み応え抜群。美月が抱えたどうしようもないトラウマ、子どもたちが抱えた誰にも言えない“秘密”を乗り越えた先には、温かな感動の涙が待っています。
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